鑑賞・題詠2009

鑑賞「039:広」

1〜236首目のなかからのお気に入り短歌です。広い、という意味をもつ言葉の、その不明瞭な尺度に作者さんがどれだけのスペースを託したのか、そのへんも楽しみながらの鑑賞でした。 ■ その広さ知ってしまったお魚はそれでも海で溺れなかった (jonny) おと…

鑑賞「032:世界」

おひさしぶりです。1〜247首のなかからピックアップしたステキ短歌です。あれ、番号飛びましたね? ってかた、正解です。笑。『題詠blog2009』の鑑賞は今年いっぱいの予定でいまして、しかしこのペースでいくと鑑賞の完走は叶いそうもない、というわけで、以…

鑑賞「030:牛」

1〜250首からのステキ短歌です。「牛」、よかったなぁー。全体的にわりと好みのものがいつもより多かったです、つややかというかね。食材を歌うとき特有、同じライン上にある慾を想起させるからなおさらかもしれません。 ■ まだ牛のかたちで吊られ無菌室を夢…

鑑賞「029:くしゃくしゃ」

1〜240首のなかからステキ短歌をピックアップします。お題との絡みとしては「笑顔」、くしゃくしゃな笑みがいちばん多かったです。あと、ひらがなのフォルムの影響からか、ネガティヴを詠むにしてもやさしく、やわらかに詠まれてました。言葉って、意味もそ…

鑑賞「028:透明」

さてさて鑑賞は続きます。1〜240首のなかからのイシハタお気に入り短歌です。コメントは後ほどにして、まずは歌の紹介を。 ■ 橋を越え探しに行った冬のあさ透明なもの食べたくなって (新井蜜) 全身で、同化したくなったのですね。見知らぬ街のピンと張りつ…

鑑賞「027:既」

1〜233首のなかから、これは!というお気に入り短歌をピックアップします。今回はぎゅっと凝縮して二首の紹介です。わりとこう、難しいお題でしたよね。これは私個人の感覚かもしれないけど、たとえば「既に」っていうフレーズ、今回はこれがいちばん使いや…

鑑賞「026:コンビニ」

今日ふたつめの鑑賞です、お題「コンビニ」の1〜235首からステキ短歌を。コンビニ、私めったに行かないんですけど、みなさんの歌を詠んでるとこう、アンテナの感度を保つためにも用事がなくても行かなくちゃ、みたいな気分になりました。迷惑でしょうけどね…

鑑賞「024:天ぷら」

1〜236首からのピックアップです。いやあ、アイスクリームの天ぷらの多かったこと! 私まだ未経験なんですけど、食べてみたいなぁー。そうそう、バナナの天ぷらはすごく美味しいですよ! おすすめです。 ■ 天ぷらの油の温度読む指よ今はわたしに触れてくださ…

鑑賞「023:シャツ」

1〜237首からのピックアップです。シャツという機能、またそのイメージ(個人的には男性のシャツは女性のブラジャーと性的に同意だとおもってます)も手伝ってか脱いだり脱がせたりするものが多かったです。それらを避けて選んだわけでは全然ないんですが、…

鑑賞「022:職」

1〜240首からのピックアップです。さてさて「題詠blog」も期限まであと2ヶ月あまりとなりましたね。私は微妙にギリギリペースで詠んでるので、ゴールテープ目指してなんとかスパークかけていきたいです。もちろん読みののろしも地味に同時進行しますんで、…

鑑賞「021:くちばし」

1〜248首からのステキ短歌です。くちばし、わりと難しいお題でしたね、ひととおり読んでみて思いました。イメージが固定されてしまうからかしら、嘴にしろ口走るにしろ、なんとなくみなさん似たトーンの歌が多かったです。そんななか、同じアイテムでも見せ…

鑑賞「020:貧」

1〜241首からのステキ短歌です。ところであれですね、自分の歌詠みに集中したい時は、なおのこと外に目を向けるのが私の場合はいいみたいです。違う趣味にも没頭したり、たとえばこうしてみなさんの歌を鑑賞したり。詠むということは、自分のなかに風を通す…

鑑賞「019:ノート」

1〜239首からのピックアップ。全体的にはストレートに「ノート」で詠まれたものが圧倒的に多かったです。おお!とおもった単語は「ラストノート」、香水のフィニッシュなんてスタイリッシュ。私は「アストロノート」で詠みました(http://d.hatena.ne.jp/ish…

鑑賞「018:格差」

立て続けに鑑賞いきましょう、1〜248首からのピックアップです。難しいお題でしたよねー、どうしても政治経済の色が強いですし。それをストレートに詠んだものが圧倒的に多いなか、そこからさらに向こうの景色を、という心意気を感じたステキ短歌もありまし…

鑑賞「017:解」

1〜249首からのピックアップです。今回は好きな歌が多くて嬉しい! いつものようにピピッときたままに感想を記しますね、みなさま多謝&感謝です。 ■ なめくぢの這ひたるあとの光りをり友と和解し夜道をゆけば (梅田啓子) 暗闇のなかに濡れている、ひとす…

鑑賞「016:Uターン」

1〜254首からのピックアップ。戻ること、あるいは戻れない/戻らないこと、どちらの状況をどんな熱度で詠まれているのかが興味深かったです。いじりかた・使いかたが限定される単語だけに似た感じの歌が多かったなか、私イシハタがピピッと感じた歌を四首ピ…

鑑賞「015:型」

こんにちは! 1ヶ月ぶりの鑑賞、1〜244首からのピックアップです。例えば「型にはまらない系」「はめられたくない系」の歌を詠むとして、しかし短歌は定型という超バリバリな「型」なわけで、その絶対的な矛盾を念頭にどう魅力的な風景を描き出すか。。と考…

鑑賞「014:煮」

1〜219首からのピックアップです。煮込んで煮込んで、おいしくなったり悩んだり、引き返せなくなったり、ひとり静かに決心したり。煮込まれてるものもさまざまでしたが、実際の料理が多かったかな。ちなみに私が煮たものは「胸のなかのうさぎ」でした。これ→…

鑑賞「013:カタカナ」

1〜221首からのピックアップです。ぎこちなさであったり意味の軽さであったり閉塞感であったり嘘であったり、さまざまな含みを持たせながらも、圧倒的にみなさん何がしかをカタカナで発声させる歌を詠んでいらしたようにおもいます。その類似性のなかから突…

短歌鑑賞・「012:達」

というわけでやっと更新、1〜223首目からのピックアップです。熟語をつくるか、○○達(たち)という複数形にするかにほぼ二分してたようにおもいます。字面や意味的にも硬くなりがちな漢字なので、そのあたりをどうアレンジしているかも興味深かったです。そ…

短歌鑑賞・「011:嫉妬」

昨日ひさびさに鑑賞を再開したところで、間髪入れず連日の更新です。衝動にのみ突き動かされ突進するこの性格をなんとかしたい(笑)。だって亥年なんだもの! と言い訳しつつ、今日も鑑賞ののろしをぽうっ、と上げるのでした。1〜221首目からのピックアップ…

短歌鑑賞・「010:街」

ややひさしぶりの鑑賞です。ちょっとバタバタとしておりました、自分の詠みも今月はかなりのんびりペース。というか、036のお題「意図」が難しくてねぇー(笑)。それでは「010:街」、1〜225首目からのピックアップです。 ■ 東京湾の見える草原ここはまだ名…

短歌鑑賞・「009:ふわふわ」

1〜219首目からのピックアップです。今日はちょっと少なめ。いろんなふわふわがありましたが、お題を受けての歌の感触は004の「ひだまり」に似てたかも。言葉の持つ既存のイメージを手堅く押さえながら、いかにそれ以上の場所へといざなってくれたか、そんな…

短歌鑑賞・「008:飾」

1〜217首目からのピックアップ。今回のお題では「飾る」「飾り」など、送りがなをつけてシンプルに詠んでるかたが多かったです。「粉飾決算」でチャレンジするツワモノもいらっしゃいました、おおー。 ■ なだらかな丘かとおもう飾り窓に暴かれてゆく白きトル…

短歌鑑賞・「007:ランチ」

1〜225首目からのステキ短歌ピックアップです、今回は少なめ。というか各歌人さんのブログへピックアップのお知らせにあがろうかどうか考えているうちに007まで来てしまった。いまのところは「のろしに気づいてくれー!」と念じながらやってます(笑)、読み…

短歌鑑賞・「006:水玉」

1〜228首目からのピックアップです。最近は自分の詠みよりも鑑賞が楽しくてそっちばかり力はいってる気が(笑)。嗚呼、走らなきゃ。 ■ あついねと笑うあごから落ちそうな水玉(たぶん舐めたら甘い) (本田あや) 甘いのか! 甘そうに見えちゃうのか! この…

短歌鑑賞・「005:調」

1〜238首目からのピックアップです。 鑑賞も回を重ねていくと、好みというか、気になる詠い手さんがちらほらと。触手をのばしつつ、感じたままを記しているので、歌の真意からはなれているときもあるかもです、多謝。あーでも、詠みも読みも楽しい! ■ 調律…

短歌鑑賞・「004:ひだまり」

1〜242首目からのピックアップです。 文字どおりほっこりした、ポジティブな恋歌が多かったようにおもいます。けれどそれを全面に出しただけの、言わばスナップ写真では歌として予想できすぎてしまって、なにか物足りない。ほっこりを表すにしてもアングルが…

短歌鑑賞・「003:助」

さてさて、「助」のステキ短歌。1〜243首目からのチョイスです。 漢字一文字のお題の場合、どんなふうに組み入れて詠んでいるか興味がわきますねー。そのまま送り仮名をつけて「助ける」「助け」とするのか、「助手」「補助輪」などの熟語をつくるのか、など…

短歌鑑賞・「002:一日」

「002:一日」のステキ短歌です。1〜237首目まで。 ■ しない日は食べない、だっけ、二人して無花果一つ食べた一日 (木村比呂) 「しない日」というフレーズが印象的。ひとつの果実を指で裂き、二人で分け合う姿が浮かびます。イチジクの断面は細胞のよう。上…