短歌鑑賞・「008:飾」

1〜217首目からのピックアップ。今回のお題では「飾る」「飾り」など、送りがなをつけてシンプルに詠んでるかたが多かったです。「粉飾決算」でチャレンジするツワモノもいらっしゃいました、おおー。


■ なだらかな丘かとおもう飾り窓に暴かれてゆく白きトルソー
  (秋月あまね)
きれい。無機質のエロチシズム、飾り窓のデブルミーニングが効いてます。職業がら私はトルソーに脱ぎ着させることが多いんですが、布地に包まれた凹凸が砂丘のように感じるときがあって。だからかな、この歌の景色がとてもしっくりきました。


■ 蜜を吸う生き物死ねばしばらくは髪飾りとして風にふるえる
  (我妻俊樹)
お題008にしてピックアップ三度目。告白します。ファンです。私は短歌のあれこれをまだよく知らないけれど、我妻さんの歌が凄いということだけははっきりとわかる。「蜜を吸う生き物」、確かにそう、けれどこの言葉はこんなにも強く響くものだったろうか。歌のなかで話者はなにひとつ描写されないまま、風にゆれる髪が、その乾いた蝶をつまみ上げ髪にはさんだ話者の指先までが、ありありと立ち上がってきます。私もいつか、こんなふうに詠めるようになりたい。


■ ボールペンのキャップの味を確かめる装飾音符書き足しながら
  (ひぐらしひなつ)
あーいいですね。これも「見える」歌です、無意識をこんなふうに詠めるなんて素敵。思案しながら曲作りの最中、走っては止まり止まっては走るベン先、それに合わせて踊っては唇にとまるキャップが目に浮かびます。


■ デイルーム小窓を飾る折り紙の造花にうっすり埃が積もる
 (はしぼそがらす)
結句に向かっての静かなズームインが印象的でした。そしてすこし、さみしい。折り紙という祈りに降り積もっていく日常。願わくば、幸福で。ありますように。