鑑賞『短歌研究新人賞』(2014年・第57回) 予選通過

こちらに何かを書くのは久しぶり。ここは短歌を始めたころに参加した『題詠blog2009』の自作と鑑賞記事の置き場でした。
現在Twitterのほうで、今年の短歌研究新人賞の応募作のなかからグッときたり気になったりした歌の感想をぽつぽつ流しているところ。ここにまとめていきます。予選通過作から。

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■ 虹じゃないところで虹をほめている わたしは妙な医院を見つけた
   (伊舎堂仁)
そうだ、たいていの足の位置は虹ではないところだ 一字空けは視線の動きだろうか 瞳孔の絞り それとも虹が何らかのメタファか 気になる一首


■ 延々と伸びゆくテールランプから零れるように左折がしたい
   (牛隆佑)
左折「を」ではなく左折「が」 零れるように、からはアンバランスな濁点をあえて付けるほどの強い意思/願望 興味深いのは話者視点ではないところ 零れるさまを 見届けられたいこころ


■ いもうとは愛語りをりストローの頸椎惨憺とよぢれつつ
   (沖月仄生)
ストローの頸椎 よじるんじゃなくてよじれるんだ 残酷さがぴったりでよいなあ


■ おろしがねにはりついたまま干涸びた生姜の繊維 まだ生きていた
   (しおみまき)
辛かったのだ とうに 涸れたとおもっていたものが 口にふくむ その繊維をつまみあげた指先 痛みがみえる とおいとおもっていたもの


■ 致死量のおやすみを聴く 隕石が飛来する日は今夜がいいな
   (ストウヒカリ)
混じりっけなしの、大量のおやすみだろう まっすぐな そのように受けとったときの極まりに憶えがある 嗚呼、今日限りでいい、って感じるよね


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ストウさんの好きだなあー。