鑑賞「024:天ぷら」

1〜236首からのピックアップです。いやあ、アイスクリームの天ぷらの多かったこと! 私まだ未経験なんですけど、食べてみたいなぁー。そうそう、バナナの天ぷらはすごく美味しいですよ! おすすめです。


■ 天ぷらの油の温度読む指よ今はわたしに触れてください
   (久哲)
ストレート。なんかグッときました。料理人の緻密で繊細な指先に、「わたし」だって読まれたいよね。それでも肌は、どこまでも孤独な味だ。


■ お母さん 天ぷら揚げていた時だけあなたを好きと思えた時間
   (ゆり)
歌は、すべての表現は、楽しんで編まれるという以上にどうしようもなく編まれていくものだなって。思うのです。詠んでも詠んでも苦しい、とか、言葉にすることの恐れ、とかね、これも作者さんにとってそれに近い場所にあるんじゃないかなって、なんとなく感じました。例えば、天ぷらというアイテムが現実なのか詩的現実なのかはもう、ここでは重要ではないんですね。それをきっかけとしてこの歌が詠まれるということこそが重要で。切実にふるえる結晶のような歌に、これからも出会っていけたらいいな。


■ 「揚げたてが一番だから」の言い訳は天ぷら摘んで君の肩越し
   (詠時)
うまい。そうなんですよ、この場合、天ぷらが本命じゃ魅力半分なんですよね。言い訳だからこそおもしろい。お題の存在感をスッとスライドさせて最高の旨味をだしてる一首です。結句の名詞止めも生きてますねー、なんかこう、とととーって感じであっという間にそこにいて、いまにも彼女の肩にアゴを乗せそうな雰囲気。うまい。