2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

023:シャツ(石畑由紀子)

なにひとつ約束はない 安定の利いたシャツを剥ぎからまる逢瀬

短歌鑑賞・「002:一日」

「002:一日」のステキ短歌です。1〜237首目まで。 ■ しない日は食べない、だっけ、二人して無花果一つ食べた一日 (木村比呂) 「しない日」というフレーズが印象的。ひとつの果実を指で裂き、二人で分け合う姿が浮かびます。イチジクの断面は細胞のよう。上…

短歌鑑賞・「001:笑」

『題詠blog2009』に参加しているかたたちの投稿作から、ステキ短歌を不定期で紹介していこうとおもいます。 「001:笑」は1〜265首目まで。 ■ 遠き縁につながる人か喪服着た一群の中に笑い声する (西中眞二郎) 情景がありありと目に浮かびます。故人という…

022:職(石畑由紀子)

熱病に抗えぬまま君に手をのばす殉職への序章(プレリュード)

021:くちばし(石畑由紀子)

くちばしで穴をあけ幹に棲みます私そのように君に棲みます

020:貧(石畑由紀子)

草食の君に差しだされ熟れたトマトに歯をたてる貧血の朝に

019:ノート(石畑由紀子)

「圏外」になったこころで抱き合ったアストロノート《コスモスよ、咲け、》

018:格差(石畑由紀子)

あおぞらに拡散してくポプラの綿毛ぽつり見上げる恋の格差よ

017:解(石畑由紀子)

解くことが答えではない ポケットの中でちりりと燃える知恵の輪

016:Uターン(石畑由紀子)

撥ねたのは過失なんです、(Uターンしてから二度目はゆっくり轢いた、)

014:煮(石畑由紀子)

胸で食むうさぎを鍋で煮る 白くさみしんでゆく背中のカーヴ

015:型(石畑由紀子)

新型なら上書きができるんだろう 消しゴムかけて毛羽立ちに、泣く

013:カタカナ(石畑由紀子)

二十歳にして戸籍の衝撃、三千代先輩「三千代の“チ”だけがカタカナだった!」

011:嫉妬(石畑由紀子)

しゃわしゃわと濡れそぼってくアスファルトに嫉妬していたビー玉の夏

012:達(石畑由紀子)

街じゅうに言い訳にじむ赤信号は迷子の大人達にやさしい

010:街(石畑由紀子)

つないだ手にビー玉しのばせて君と正しき街を放火しにいく

008:飾(石畑由紀子)

飾られてガラス細工は夢をみる汚れた指に犯される明日

009:ふわふわ(石畑由紀子)

独り言にすらできない愛されかたをしました 終電ふわふわと待つ

006:水玉(石畑由紀子)

彼女が夜戻らない日は水玉のネクタイが合図 おはよう、好きよ

007:ランチ(石畑由紀子)

同僚の恋のはなしを不可思議な水越しに聞くゆらめくランチ

005:調(石畑由紀子)

まなざしを転調させて駆け上がる靴音ふたつ鉄塔に響く

004:ひだまり(石畑由紀子)

物陰は数時間後にひだまりとなってふたたび物陰になり

003:助(石畑由紀子)

いまはもう見えなくなった補助輪のかろかろ我の胸に鳴り在る