2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧
なにひとつ約束はない 安定の利いたシャツを剥ぎからまる逢瀬
「002:一日」のステキ短歌です。1〜237首目まで。 ■ しない日は食べない、だっけ、二人して無花果一つ食べた一日 (木村比呂) 「しない日」というフレーズが印象的。ひとつの果実を指で裂き、二人で分け合う姿が浮かびます。イチジクの断面は細胞のよう。上…
『題詠blog2009』に参加しているかたたちの投稿作から、ステキ短歌を不定期で紹介していこうとおもいます。 「001:笑」は1〜265首目まで。 ■ 遠き縁につながる人か喪服着た一群の中に笑い声する (西中眞二郎) 情景がありありと目に浮かびます。故人という…
熱病に抗えぬまま君に手をのばす殉職への序章(プレリュード)
くちばしで穴をあけ幹に棲みます私そのように君に棲みます
草食の君に差しだされ熟れたトマトに歯をたてる貧血の朝に
「圏外」になったこころで抱き合ったアストロノート《コスモスよ、咲け、》
あおぞらに拡散してくポプラの綿毛ぽつり見上げる恋の格差よ
解くことが答えではない ポケットの中でちりりと燃える知恵の輪
撥ねたのは過失なんです、(Uターンしてから二度目はゆっくり轢いた、)
胸で食むうさぎを鍋で煮る 白くさみしんでゆく背中のカーヴ
新型なら上書きができるんだろう 消しゴムかけて毛羽立ちに、泣く
二十歳にして戸籍の衝撃、三千代先輩「三千代の“チ”だけがカタカナだった!」
しゃわしゃわと濡れそぼってくアスファルトに嫉妬していたビー玉の夏
街じゅうに言い訳にじむ赤信号は迷子の大人達にやさしい
つないだ手にビー玉しのばせて君と正しき街を放火しにいく
飾られてガラス細工は夢をみる汚れた指に犯される明日
独り言にすらできない愛されかたをしました 終電ふわふわと待つ
彼女が夜戻らない日は水玉のネクタイが合図 おはよう、好きよ
同僚の恋のはなしを不可思議な水越しに聞くゆらめくランチ
まなざしを転調させて駆け上がる靴音ふたつ鉄塔に響く
物陰は数時間後にひだまりとなってふたたび物陰になり
いまはもう見えなくなった補助輪のかろかろ我の胸に鳴り在る