鑑賞『023:蜂』

TB1〜124のなかからのピックアップです。甘みにも痛みにもなるお題ですね。


■ へいきさ、と言ってあなたは蜂蜜の瓶に沈んだ匙を摘まんだ
   (梳田碧)
わーーーー! へいきなんだ。きっと「あなた」はためらいなく色んなことに飛び込んでいくひとなんだ。ここには「あなた」の言動だけで、主体の動きや心情は具体的になにも描かれていませんが、なんかもうわかっちゃいますよね。主体はそのように匙を摘めないひとで、転じて物事や人に対し、いやここでは他ならぬ「あなた」に対し何らかを躊躇しているひとで。飛び込める「あなた」と飛び込めない主体の対比を蜂蜜で描ききっています。蜂蜜ってところが象徴的。やはりこのお歌は恋愛として詠みたいです。「あなた」や君などの二人称は短歌を甘くしすぎるとも言われますが、すこし距離をだして例えば『弟』とか『友』で詠んだとしたら、蜂蜜をはさむ二人の関係性がここまで活きないとおもうので、「あなた」がいいな。いいなあー、とても好きです。