鑑賞「018:格差」

立て続けに鑑賞いきましょう、1〜248首からのピックアップです。難しいお題でしたよねー、どうしても政治経済の色が強いですし。それをストレートに詠んだものが圧倒的に多いなか、そこからさらに向こうの景色を、という心意気を感じたステキ短歌もありました。そんななかから3首を。


■ 格差拡大のニュースを聞きながら犬と電柱との交尾を見てた
   (ひぐらしひなつ)
なんというもの悲しいシンクロ。格差の歌に人間とほかの動物がでてくるとき、“俺らには関係ないぜー”って感じになるかとおもいきや、この歌は違うんですよね。だって電柱! これは色々せつない。。そうかぁー野良とかペットとか、ペットにしても好かれ度とか、人間に好かれてても同種に好かれんことには、とか、人間にはわからない色んな格差を生きてるんですよね犬は犬で。春に詠まれたものとおもわれますが、灼熱のこの季節に読むのも合いますね。


■ 世代間格差を嘆く恋人のくちびるに差し入れるポッキー
   (五十嵐きよみ)
これいいなー。恋愛を詠んだもののなかで一番好きです、ぶすっとした表情の年上なくちびるにふーん?ふふっ、って感じでポッキーをつっこむところが目に浮かぶようです。からくてあまい、スタイリッシュでエロティックなステキ短歌。


■ 折り鶴はもうすぐ1000羽 格差など知らない指で丁寧に折る
   (暮夜 宴)
この日本にいて「格差など知らない指」と言い切る、この折り鶴はおそらく、海の向こうの途上国に贈られるのでしょう。折り鶴は誰かの空腹を満たすことはない、作者はこの祈りが、ある局面においては無力だということも知った上で、やはり人は祈らずにはいられないのだということを、角をそろえ一心に折り続ける話者の指先に込めたのかもしれません。