鑑賞「022:職」

1〜240首からのピックアップです。さてさて「題詠blog」も期限まであと2ヶ月あまりとなりましたね。私は微妙にギリギリペースで詠んでるので、ゴールテープ目指してなんとかスパークかけていきたいです。もちろん読みののろしも地味に同時進行しますんで、よかったらときどき覗いてみてくださいね。素敵な歌をありがとう。


■ 職あれば幸せだよと俯いている君の夢お元気ですか
   (マトイテイ)
夢を追いつづけて、けれどあまりに届かないことで、日々に胸を張れなくなっていく、そんな。「お元気ですか」に話者の心情が色濃く投影されてますね。なにもできない・言えないけど、想ってるとき、なにかを伝えたいとき、人は「元気ですか」って、つぶやくのです。


■ ハロー朝ハロー冬空ハロー雪、職安に行く今日の計画
   (新井蜜)
決心したあとは、いつもの風景がまったく違って見える。その何気ない日々のかがやき・きらめきが「ハロー」という言葉に結晶みたいに集結されてます。職安のゆううつを詠う歌が多かったなか、文字どおりきらめいていたステキ短歌。


■ 衛星が伝へて深き空の青はるけきかなや職業野球
   (野州
異国の空のした、乾いた金属音が聞こえてくるようです。職業野球っていう響きは日本の野球より大リーグが似合ってますね。そんなはるかな土地の歓声に、時を同じくしてこの地で触れられるふしぎ。映像を届ける衛星の、宇宙の孤独。そんなはるかな。


■ 「職業が家出少女のともだちがあたしを少しこわしていった」
   (間遠 浪)
高湿な夜風を感じます。一緒の時間が「わたし」の軸をふるわせ、狂わせて。もう戻れない、いや、心のどこかで「わたし」は戻れなくなりたかった、のかも。人と出会うということ、異質なものとまみえ交わることの避けがたい魅力を感じます。