鑑賞「028:透明」

さてさて鑑賞は続きます。1〜240首のなかからのイシハタお気に入り短歌です。コメントは後ほどにして、まずは歌の紹介を。


■ 橋を越え探しに行った冬のあさ透明なもの食べたくなって
   (新井蜜)
全身で、同化したくなったのですね。見知らぬ街のピンと張りつめた静寂を感じます。食べるという言葉のチョイスがすばらしい。いいですね。探しもの、見つかってもそうでなくても、きっと豊かになって帰ってこれる、そんな気がします。


 * * *
「透明」。これは。。個人的にはとても過激なお題でした。というのも、いかに言葉でせかいを解体・再構築するか、を考えるとき、詩がつねに抱えている大きな課題のひとつこそがこの「透明」であり、この言葉を直接織りこむことをずっと危惧してきました。つまり詩情的に便利すぎるんです、この言葉。形にならない事象・感情の多くをこの「透明」ひとつで何かを言い得たような気になってしまい、多用することでそのひとの表現がとても安易なものになってしまう。これは短歌にも共通した感覚なのでは、とおもっていたんですが、31文字という凝縮世界ではまた違った事情があるのかもしれません。……ちっと熱く語ってしまいました。。言葉バカですみません。。詩のあたまで短歌のぜんぶを感じようとするのはやはし無理があるなぁ。私はどうありたいんだろう。(ぐるぐる)自問タイムに突入して鑑賞「028:透明」おひらきです。