鑑賞「015:型」

こんにちは! 1ヶ月ぶりの鑑賞、1〜244首からのピックアップです。例えば「型にはまらない系」「はめられたくない系」の歌を詠むとして、しかし短歌は定型という超バリバリな「型」なわけで、その絶対的な矛盾を念頭にどう魅力的な風景を描き出すか。。と考えたとき、これってものすごく難しいお題ですねぇー。そんなふうに挑戦してみるのもこういうお題の醍醐味なのかも。強者きたれ。それはともかく、今回もお題にからめてさまざまな熟語が編み出されてました。


■ 来なきゃいい夜中のバスを冬型の気圧配置の隅で待ってる
   (笹本奈緒
ひとりかな。それとも、ふたり。かな。「気圧配置の隅」っていうのがいいですね、せかいの隅っこに今、ひとりきり/ふたりきりなの。冬まみれのなか、白い息で繭をつくるみたいに。時間よ止まれ。つめたさとぬくもりを感じます。


■ たましいのきっとどこかがおぼえてるO型の血が流れうつ音
   (村木美月)
つながりを失っても。日々のなかで、思いださなくなっても。内側に、留まり続けるリズムがある。身体には皮膚があって、どうやってもひとつにはなれないけれど、たましいでならその記憶ごと、一緒になれるような気がして。さみしくて、いとしい歌。


■ なんにでもこだわりってのがあるようでたとえば不知火型じゃだめとか
   (空色ぴりか)
イシハタ的・今回のベスト熟語(?)。だって不知火型ですよ! 相撲好きにはたまりません(笑)。詳しくないかたにちょっと説明しますと、横綱の土俵入りの型には「雲竜型」と「不知火型」の二つがあります。雲竜型とは、左手は脇腹にすえたままにし(守りの象徴)、右腕は前方に伸ばしたあと高くせり上げていく(攻めの象徴)型。いっぽう不知火型は、両腕とも高くせり上げていく型。つまり「不知火型」は両攻め、攻めて攻めて攻めまくる! という型なのです。これを知ったあとでもういちど歌を読み返すと、どうですか? この歌のもうひとつの味が見えてきますねー。そうなんです、やっぱりね、攻守・静動・押引、バランスって大事。夢中になるにしても突っ走るばかりじゃ、上手くいくものもいかなくなっちゃう。だからじっくり見据えて、いきたいの。


■ 二回目に逢っていきなりB型と決めつけられたシーツの隙間
   (若崎しおり)
嗚呼、素敵だなぁー。スタイリッシュなエロス、「二回目に逢っていきなり」が「B型と決めつけられ」と「シーツ」の二つにかかっています。ふふ、時間じゃないよね、君を感じることも、恋のステップも。