鑑賞「014:煮」

1〜219首からのピックアップです。煮込んで煮込んで、おいしくなったり悩んだり、引き返せなくなったり、ひとり静かに決心したり。煮込まれてるものもさまざまでしたが、実際の料理が多かったかな。ちなみに私が煮たものは「胸のなかのうさぎ」でした。これ→http://d.hatena.ne.jp/ishihata71/20090313/p1。だからもう、さみしくないはずなのにね。


■ 煮えたぎるアタシの鍋にそうやってイワシの骨とか投入しないで
   (伊藤夏人)
嗚呼、嗚呼。これいいなぁ。そんなんじゃない!っていう。肝心なときにはちゃんと私のこと解って欲しい、まして“かまえばいいや”的にいい加減な対処ですまさないでよ。怒るってのはその反面、求めてるってことでもあるんだもの、真剣に、私を見てよ。ユーモラスに描かれていながら、歌の中身はとってもさみしいのです。「そうやって」「イワシの骨とか」「投入しないで」。言葉のチョイスもいいですね。


■ 我がために煮返す芋は崩れおり 君は戻らぬ 君に戻れぬ 
   (みつき)
鍋のなかに自分を。見たのでしょうか。確かだったものがいま本当に、壊れたということ。恋のかなしみも決断も、自分ひとりきりのものだ。孤独であること、その当たり前のかなしみが、しんしんと伝わってきます。