鑑賞『002:幸』

TB1〜137までのなかからのピックアップです。


■ ベランダでぬるい缶ビールを飲んでいる 幸せになってください
   (成瀬悠太)
彼女への祝杯は、自分にはやさしくなくて。言葉ではないもので長い物語が書かれていますね。初句と三句の脚韻(「で」というむずかしい響きをうまくまとめてらっしゃいます)、句またがりのリズムが心地よいです。

鑑賞「001:初」

ハロー、せかい。ついさっき思い立って、また始めてしまいました。えへ。昨年のようにがっつりとはいきませんが、ほんのささやかなコメントとともに超不定期で(笑、私のお気に入りを紹介していきますね。のんびりおつきあいいただけたら嬉しいです。では『001:初』、TB1〜136までのなかからのピックアップです。


■ 音楽を初めて聴いた時みたいどんな嘘でもつける気がする
   (藤田美香)
この上句にして、下句に「嘘」をもってきたところの凄さ。この嘘はきっと、まがまがしさじゃなく、純度高くつきぬけていく希望にみちた嘘だ。『最後の一葉』、みたいなね。


 * * *
そうそう、ちなみに。昨年は『題詠blog2010』の投稿作品を紹介していた『純響社WEB』(http://junkyosha.com/)のコラムですが、今年は短歌雑誌の投稿欄からピックアップしていくことにしました。こんな感じ(http://junkyosha.com/atrie/10.html)。短歌誌にも毎月ものすごい数の投稿作が載っています、ウェブ同様、雑誌への投稿もきっと充実のひとときですね。これまで同様、よかったらぜひ読んでみてくださいね。

さて。

ハロー、せかい、すこやかですか。
『題詠blog2011』が始まりましたね。先日、ぽくぽくと会場を見にいって、お題を拝見しました。おおー、すでに120人以上のかたが走りはじめてるんですね。っていうかもう完走したかたもいるんだ、びっくり。出来はともかく、鍛錬にはなりますよね、短歌会の合宿なんかでは一晩で百首詠む特訓があるらしいし(ひいぃぃ)。いつかはやってみなきゃなーとおもいつつも、私はもともと数を詠むほうじゃないので、一夜でからだごと乾涸びそうです。。笑

今年は、ほかにやってみたいことがあり、二年ぶりに題詠blogを走ることは断念しましたが、またちょこちょこ会場へ見学に行こうとおもっています。好きな歌詠みさんの新作が読めるうれしい場所ですもんね。


ひとまず自分でも一首だけ、ぽちりと詠んだものを置いておきます。「001:初」です。参加中のみなさん、ゴールテープ目指してフレーフレー!


■ メルカトル図法はしずか まぼろしのみなそこに初雪敷きつめて
   (石畑由紀子

 

題詠blog2010鑑賞:『純響社WEB』のコラム更新しました

ひょっこりとこんにちは。心的に全身筋肉痛のいしはたです、いてていてて。今月一気に走ったからなあー;笑

さて、順番が前後してしまいましたが、先日ちらりとお話ししていました(http://d.hatena.ne.jp/ishihata71/20101202/p1)、お題「063:仏」からのステキ短歌を純響社WEBのコラム『アトリエの庭から』にて紹介させていただきました。今回ピックアップしたのはこのお歌です。


■ ひんやりと仏間に足の裏ならびまるで葉書のようです かしこ
   (bubbles-goto)
並の直喩じゃないです。なにしろ、足の裏が葉書のようなんです。お歌の風景にふかく根ざした鮮やかな技。鑑賞を続けているあいだも、はやく紹介したくてわくわくしてました。よいよーよいよー、コラム読んでみてもらえたら嬉しいです。


 ●『アトリエの庭から』第八回 死者にしたためる便り —「題詠blog2010」鑑賞

  http://junkyosha.com/atrie/08.html


 

鑑賞「099:イコール」

TB1〜161のなかからのピックアップです。


■ 欲ばりなお前がつなぐイコールのとりとめなさとして、桃と螺子
   (村上きわみ)
桃と螺子がイコールになるくらい、主体からすれば “なんでそうなる?!” って主張や解釈も「お前」にとっては自然な方程式なんですね。……なんですね、って今ひとごとのように書きましたけどいやこれ、なんか耳が痛いぞ? ひいぃぃだって自分は自分であることが自然だから、わからないじゃないですか、例えばひとりでなにか考えてるときも、自分にとって超自然な足どりで思考が暴走してるときがあるに違いないんですよ。そういう傾向はおんなのこほど多い気がする。嗚呼、このお歌も主体はおとこのこですもんね(相手をお前と呼ぶその質感から推測)。うん、桃と螺子。結句ってだいじなのだと。かっこいいです。

鑑賞「100:福」

ハロー、ハロー、せかい。ここまできたね。TB1〜161のなかからのピックアップです。


■ 愛しきものに触れ得し至福かへりくるひかりうけ撓(しな)ふ水底の藻に
   (橘 みちよ)
みなそこに、陽が至るとき。そうですね、藻は植物だもの、干潮を待ちわびているのでしょうね。「愛しきものに触れ得し至福」は常ではないこと、主体が藻に自身を重ねているようでもあります。


■ 誰かから逃げ出してきた幸福をひとつひろってうちへ帰ろう
   (すいこ)
「うちへ帰ろう 」。ほっこりと詠まれているんですけど、それはなかなかにシビアな幸福感でありました。ひとは、自分のこころが生み感じたしあわせだけで生きてはいない。ときに相対的であるし、分け合うものじゃないこともあり、奪ってすらいるかもしれず。社会を生きること、人と関わって生きる悲喜の裏のやるせなさを想います。


■ 幸福を祈りて春子と名を呼べば、きゃきゃと笑い声は転がる
   (なゆら)
題詠blog2010の鑑賞をしめくくるのはこのお歌だなあ、とおもいました。春子を見守るひだまりの視線。このひとが、彼女に「春子」と名づけたのだと。なゆらさん、春子への愛あふれる百首をありがとう。

完走報告?

ゴーール!(誰もいない道をバンザイで駆けぬける) やったーやっとだよーううう。(バンザイしたまま仁王立ち)


開催期間中にはかないませんでしたが、三週間ほどおくれてやっと百題の鑑賞を果たすことができました。ふうー。お題039で鑑賞ストップした昨年に比べたら格段の進歩です!笑
本コースをもくもくと疾走するみなさんを追いかけて、沿道をでべてべと並走いたしました。なにかと足りないまま好き勝手に鑑賞&コメントしていたので、ピックアップが偏っていたり詠み手の真意にうまく寄り添えてなかったり、へんちくりんなラブコールになってることも多々あったかとおもいます。好きって気持ちと私なりの探究心でなんとかここまできました。いっしょに走ったかた、走ってるとこを見ててくれたかた、ありがとう。主催の五十嵐きよみさん、すてきな場を感謝です。これでちょっとでも成長できてたらいいなー。


ゴールはつぎのスタートなので。バンザイの両腕をおろして、あったかいカフェオレを飲んだあとは、自分の口で「バーン!」って言ってまた走りだすのです。詠んだり読んだりしながら、またハローって。どこかで会いましょうね。ありがとう。