短歌鑑賞・「001:笑」

『題詠blog2009』に参加しているかたたちの投稿作から、ステキ短歌を不定期で紹介していこうとおもいます。
「001:笑」は1〜265首目まで。


■ 遠き縁につながる人か喪服着た一群の中に笑い声する
  (西中眞二郎)
情景がありありと目に浮かびます。故人という一本の太い幹を介してつながっている、それぞれの根、血と絆と。弔いの空間を満たすふしぎなあたたかさを感じました。


■ 憫笑のくちのかたちで死んでいる犬を跨いでゆく橋まつり
  (我妻俊樹)
笑うことを知らなかった動物がいま、意志の外側で笑っていて。跨いでゆく足の主の表情はどうなのだろう……もしくは祭りの擬人化でしょうか。弔いにも似たこの構図にグッときました。祭りの季節にからめ儚さが幾重にも描かれていて素敵。


■ 残されたガテマラ産の豆を煎る焦がさぬように笑って泣いた
  (水口涼子)
残された、というたった一言からたくさんが香っています。私も、そして去っていった人の習慣も、豆とともに残された存在で。笑う、笑ってしまうことの可笑しさ、さみしさが染み入ってくるような一首。


■ パンジーの模様が笑っているようでつられてしまう診察を待つ
  (はしぼそがらす)
風邪だったり精密検査の結果待ちだったり、なにがしかの心細さを抱いているだろう人もとっさに笑む、笑むことができるという救い。そしてその奥に見えてくる、花を置く側のこころ。どちらも花のよう、静かにささやかに描かれていて好きです。