鑑賞「095:黒」

TB1〜162のなかからのピックアップです。今回はシンプルに。


■ 黒い河 冬のぼくらの心臓へ至る夜更けの大静脈は
   (飯田和馬)
からだをめぐりめぐって帰ってきたところ。ですね。冬のぼくら、夜更け、もうじゅうぶん傷つけ、傷ついてきた。それでも心臓をぬけ、また春があることをしずかに示唆しています。「ぼくら」という複数形はもしかすると評価の分かれるところかもしれませんが、時代・世代をも詠ってあえてそのようにされたのだと私は受けとめました。


■ この黒は君の黒ではないなどととりあげられて朝が始まる
   (南野耕平)
飯田さんのお歌とは対極の位置にあるかも。こちらは共有できないかなしみが詠われています。ぼくらの黒だとおもっていた、おもっていたかった。真夜は孤独なこころにやさしく、夜明けはそのように残酷なものかもしれません。このお歌、好きです。