鑑賞「083:孤独」

TB1〜166のなかからのピックアップです。むずかしいお題ですね。扱いかたひとつで気高くも安くもなる言葉。そのひとの、孤独観がどんなものであるか、丸見えになってしまうだろう言葉です。


■ 昼休み星野しずるを回してる今日のしずるは「孤独」が好きだ
   (中村あけ海)
うん。いま、という感じです。そしてお題の詠み込みかたの妙。中村さんは「孤独」というお題のむずかしさをわかっているんだと感じました。すこしズラして詠み込み、「孤独」が詠まれたしずる短歌に物想うという形で主体の孤独を匂いたたせる、という構造を見せてます。昼休みに星野しずるを回す主体。職場詠みで統一してらっしゃるからこのお歌でもニュアンスを出すため「昼休み」としたんだとはおもいつつ、なにかこう、主体の行動から心的なものをも感じさせますね。


■ あたためた牛乳の膜もてあそぶ匙よ孤独は佳きものですよ
   (村上きわみ)
「匙よ」、とありますが、実際はその匙を手にしているひとに呼びかけているのでしょうね。なにか悩みや悲しみの話を聞いているのかもしれないし、ただ黙って向き合っているだけかもしれない、いずれにしてもホットミルクを作り、膜をもてあそぶそのひとは、まだ孤独の悲喜をじゅうぶんに味わいきれていないのでしょう。ひとつ前のお題のきわみさんのお歌でもそうでしたが、見守るような視線をお歌のなかに感じます。あたたかくて、そして、すこしさみしい。好きです。