鑑賞「071:褪」

ハロー、せかい、すこやかですか? TB1〜173のなかからのピックアップです。


■ 色褪せた辞典の表紙たぶんきっと十五の時に一番褪せた
   (zoe)
下句にハッとしました。みえないものを描いているから。物の状況と同時に、スピード感への意識を感じるから。年輪でいうところの、夏と冬の幅差みたい。同表記でお題を二度載せているのにしつこさを感じないのは、品詞を変えているからかも。「たぶんきっと」という部分には賛否分かれるかもしれませんが、憶測(たぶん)から確信(きっと)というこころの動き、そのほんとうにほんの僅かな時の経過を感じさせるのに有効じゃないかしら、と私はおもいました。たぶん→きっと。この矢印のところで、主体の眼球、うごいてる。ふっと、わずか上に。


■ つらいとき頼りにしたので人並みに真ん中だけが色褪せている
   (壬生キヨム)
ふしぎ。なんの真ん中なのかいっさい描かれてないのでなんじゃらほいなんですけど、「つらいとき」ならばいかにも、頼るのはまんなかでしょう。読むごとに、しみじみ解るような、ますます遠ざかっているような。ふしぎだけど、気になるお歌です。