鑑賞「062:ネクタイ」

TB1〜125のなかからのピックアップです。


■ ネクタイを選んで気づくこともある 似合わない色こんなにもある
   (氷吹郎女)
嗚呼、これ。ドキッとするなあ。自分のことなら、洋服なんかでもあーこれ私に合わないし、ってすぐわかるし、それ自体に特別ハッとしたりしない。けど、恋人のことならば。あれでもないこれでもないってやってるうちに、選ばれて/選んで一緒にいるはずの恋人に、選ぼうとおもえないものが沢山あるってことに気づく。似合うものはあるのに、「似合わない」っていう否定形の事実のほうがより強く焼きつく。それはきっと、主体がふと自身に投影しているから、かもしれません。……好きで、一緒にいるけれど。彼/私はほんとうに、私/彼が似合っているのだろうか……という、ひとつの問い。関係が壊れるようなエピソードでは全然ないけれど、なにかふっとこれまでの風が変わるような、そんなちいさなゆれを感じます。シンプルな言葉運びもこのお歌ではうまく作用しています。