鑑賞「048:来世」

TB1〜134のなかからのピックアップです。来世、は当然あるという前提で詠まれているのか、おとなのやさしい嘘なのか、祈りなのか。「来世」に対する意識、この言葉でなにを表そうとしているのかがとても興味深かったです。また、「前世」「現世」ということばとセットで編まれているお歌も多かったです。それだけで三十一文字のうち九字使ってしまうことになるので、残りの文字数でことば以上の奥行きを出すのはなかなか難しそう。


■ ひとつひとつは来世に似たり白めきて湯にほどけゆく鮭のはららご
   (中村成志)
鮭の卵を処理しているところです。私もやったことがあるんですけど、あれ、お湯でばらすと楽なぶんイクラの膜が熱でほんのり白く、かたくなるのね。鮭の腹からとりだしたひとつひとつ……その鮭が次のいのちに託したもの……が生まれぬまま「白めき」ている、その不透明なさまが、あるようでいて見えなくなっていく、捉えられない自身の「来世」感と重なります。初句が七文字となっていますが、小さな卵がひしめきあっているさまを音で表しているようにも取れて、必然的な字余りであると言えます。