鑑賞「039:怠」

十日ぶりのこんにちは。TB1〜137のなかからのピックアップです。


■ 怠り方のひとりはひんやり眠りたり今日の約束ひとつを消して
   (行方祐美)
音韻のここちよさは言うまでもなく。特記すべきは「怠り方のひとりはひんやり眠りたり」、なんて愛らしい表現方法でしょう! だって「怠り方」が擬人化されて、それもきっと他にもわらわらと何人かいるんですよ脳内に。それぞれの“怠り嬢”たちがそれぞれの怠り方で気ままに本日の任務を遂行(怠業?)する、そのさまを主体自身が冷静に観察してるんですよ、ううぅぅ。……いや「ひんやり」と眠っているのだから、実際の主体は愛らしいというよりもっとこう、なんらかの感情を麻痺させて約束を流すというか、そういうニュアンスだとおもうんですけど。自らの動向、その手段を擬人化し他者とすることによって、自身にもコントロールしきれない、しかし意識下でのつよい意志かもしれない変調の、冷静かつ非凡な描写に成功しています。こういうものまで擬人化できるという、技巧にも感性が光る一首。これ、これは、ちょっとすごいです。