鑑賞「031:SF」

さて、さくさくと本日三つ目のお題、TB1〜119のなかからのピックアップです。


■ SFが何の略かを囁いて二人で見ていた蜻蛉の交尾
   (壬生キヨム)
うまいなぁーー! なんでもないよくある会話から始まり、指先できゅっとつまみ上げたような山が結句に用意されています。「蜻蛉の交尾」の勝利。けど途中でちゃんと匂わせてもいるんですよね、「囁いて」って。この「二人」は恋人でしょうか。いや恋人っていうよりこの場合は彼氏彼女って響きかな、まだ学生っぽい。で、一回だけセックスしてるの。私たち、あれをしたのよね、って思いながら、別物のようなふしぎな気持ちで眺めてる。(以上、妄想タイムでした)「交尾」は生身の生命の営みでありながら、それが「蜻蛉」のものであること、にぶく光ったほそ長い尾を持つ昆虫のそれはどこかサイエンティック。初句の「SF」と結句の「蜻蛉の交尾」は飛躍のようで飛躍だけじゃない、たしかな地続きです。いいですね。