鑑賞「030:秤」

TB1〜143のなかからのピックアップです。ぎゅっと一首紹介しますね。


■ 秤量瓶に溜まる吐息か昼過ぎて窓にゆつくり降る雪がある
   (行方祐美)
吐息と雪が同質のものとして詠われ、秤量瓶の内側が湿りを帯びた質量でけむってゆく様子が描かれています。私は詩歌を鑑賞する際、すべての叙事はそのまま抒情でもあるとおもっていて、その風景から心的なものを見いだそうとする癖があり、果たしてすべてのケースが詩歌にとってしあわせなことなのか、(否、不本意だと感じる作品/作者はきっといるだろう、)自問しながらの日々なのですが……この歌の窓枠にすこしずつ積もっていく雪の風景もまた、自身の感情に気づき、あまく沈みこんでゆく主体の抒情であると読んでみたいのです。行方さんはお題を受けての言葉のチョイスが毎回うつくしく、それだけで溜息がでます。うつくしい歌。