鑑賞「023:魂」

続いて今日ふたつめのお題、TB1〜154のなかからのピックアップです。む、けっこう読んできたつもりがまだ全体の四分の一にも届いていないのかー。期間中に鑑賞での完走するためにはもっとスピードあげなきゃですね。詠みのみなさんはどうですか? 期限付きのイベントではありますが、第一には、どうぞ自分らしく。


■ 雨帰り布持てぬぐう 魂を一億二億踏みつけし足
   (中村成志)
濡れて帰ることを余儀なくされる人、その足取りも、生きることで他のいのちを奪うことを避けられないのだと。二句切れのあと歌の腰に「魂を」がくることが、そのままこの歌の意味になっているようにおもいます。傷つけずには生きてゆけない魂の孤独と、そんな自身の業を自覚しつつ、慈しむさまが描かれています。


■ ふうたいを除けば軽き魂を庭の金魚に喰わせておりぬ
   (A.I)
嗚呼、これ。身に憶えがあります、金魚のパクパクをぼぉーっと、眺めてしまうの。私は水槽の熱帯魚でしたが。魂を金魚に喰わせるという表現が見事ですね、あの口に餌をやり延々眺めるときの放心したさまを的確に捉えています。なんかね、悩みなさそうに、見えるんですよね。金魚。ちょっと呆れて、ちょっと羨ましい。いいですね。


そのほかには、

■ 魂を吐き出すやうな欠伸する俺と猫との聲なき對話 (酒井景二朗)

の歌に惹かれました。ふふ、うつりますよねー。ダイナミックな欠伸の形相が目に浮かびます。共通の言語・速度を持たない者同士の、やさしい時間です。