鑑賞「022:カレンダー」

TB1〜155のなかからのピックアップです。折しもカレンダーです。ねぇ気づいてる? もうそろそろ一年の半分が、おわるってこと。夏ですね。


■ 双六のようにはゆかずカレンダーのひとますのみを今日も寂しむ
   (ふみまろ)
待ち遠しい未来の、しかし確定とはいえない関係性のまだ見ぬ予定でしょうか、忘れてしまいたい過去から遠ざかるようにでしょうか。「寂しむ」、という感情ならば前者ではないかと予想しつつ、大胆に行き過ぎることはかなわないのですよね。私たちは決まった速度で日々を噛みしめるほかなくて。賽の目にくくられた一日一日を双六に見立てているところが印象的です。


■ てのひらを押し当ててみるカレンダーはがした後の壁の白さに
   (五十嵐きよみ)
そこだけいつかの色。経年を知らないままの。てのひらを押し当てる、ではなく「押し当ててみる」のあたりに主体の心情が色濃く現れています。主体は承知しているのでしょう、壁の白さは確かにかつての自分でしたが、日々が終わったからといって心のありようは肌の日焼けが薄まるようにはもう戻ることはないということを。それは見覚えのある、知っている、別人であることを。自分でありながら自分ではないものとのふしぎな対峙が、カレンダーという、経年の象徴を介してなされたこと、そのひとこまを冷静に編むことで、逆に主体の“あの日々”が読み手の胸に迫ってくるのです。