鑑賞「018:京」

TB1〜164のなかからのピックアップです。京都、東京、やはり都にまつわるものを詠ったものが多かったです。ときどきね、実感してみたいなぁーっておもうんですよね東京や京都の芯を描いてるんだろうなって表現に会うと。数年に一度北海道からえっちらとやって来る程度の私には、京都もトーキョーもなかなかこころを許してくれません。


■ お土産に東京バナナを選ぶ日のピアスの穴は閉じてしまえよ
   (わたつみいさな)
東京バナナって。名産ってわけじゃないのにバナナなんですよね。地元銘菓というよりは駅や空港内で完結するような存在。土産という作業のための土産菓子。そこに愛はあるのか、製造される過程に、そして出発前のあわただしい時間でむいっと手にとる、それを選ぶ主体に土産対象への愛はあるのかと。下の句いいですね、一見突然のピアスのように見えて、上の句の乾きと相まってどうしようもなく塞がってゆく、傷みから自分を守ろうとする主体のこころを感じます。


■ 京友禅竿に通してチマチョゴリ箪笥に仕舞う二十五の春
   (陸王
結婚式の準備でしょうか。京友禅は相手の親からのいただきもの、もしくは引継ぎものという匂いがします。二十五歳という年齢は、現在では日本でも韓国でもやや早め。チマチョゴリを仕舞う、のただひとことにどれだけの苦悩が織り込まれているのかを想います。他方から嫁ぐとき、血よりも地であること、それが他のどこでもない京都という土地であるのかもしれません。ほんとうはね、例えばどのような動作で仕舞ったのか、名残惜しそうになのか想いを振り切るようになのか、とか、そのへんの心の動きも描いたりもうすこし磨けるお歌では、ともおもったのですが、お題消化ではない、作者のなかでの必然性を感じてピックアップせずにはいられませんでした。そしてソウルもまた京城という、「京」の字を持つ街であります。


そのほかに好きだなぁと感じたお歌たち。

■ 土地の名を冠して淡き京野菜水を含んで丸々とせり (A.I)
おいしそうで誇らしげ。カブでしょうか、「淡き」いいですね。

■やばいこれ心理テストだ 思ってたより低かった東京タワー (古屋賢一)
わはは!