鑑賞「014:接」

TB1〜171のなかからのステキ短歌です。うぅーこれも難しいお題ですね、動詞にしても熟語にしても語感が硬くなりがちなので手ごわそう。あと、お題が一文字目で登場するお歌がいつもより多かった気がして、個人的にはもうすこし溜めがあってもいいかも、と感じました。冒頭からお題文字だとてっとり早く作った感が出てしまうときがあるのと(イメージする上で、お題は一句目以外に詠み込むほうが手間がかかると経験上おもっています)、あとこれは一読者の我がままなんですけど、もしどうしても一句目に、という構成上の都合がなければ、お題に至るまでの予感を詠みこむのも豊かで素敵だなって、いつも思うんです。逢っていきなり抱きあうんじゃなくて、並んで歩いたり横顔をただ眺めたり、風に前髪がゆれるのを見つめたり、触れたい、手を繋ぎたい。。とか思ったりしたいじゃないですか。っていしはたさんなに言ってるんすか。


■ 大叔父の意味深長な視線あり接木の薔薇の成長を診る
   (理阿弥)
大叔父どうした。むかし薔薇でなにがあったんだ。それとも進行形の話なのか、つーかこの薔薇どっから貰ってきたの? 大叔父と、薔薇の向こうにあるだろう謎めいた存在にはさまれながら、頼まれごとをこなす主体が見えてきます。音韻は全体的に無声摩擦音サ行の調べで(深長な、視線、接木の、成長)、特にシはどことなく秘密めいた響きがあります。いいなぁ。


■ 交接のかたちのままに凍らせたアオイトトンボの標本を見き
   (原田 町)
交接と標本という生死の対比が印象的です。引き継がれたもの、引き継がれなかったもの、繁殖行為という名のまま、滅びつづけているいのち。「凍らせた」っていう表現がいいですね、アオイトトンボの、あの鮮やかな青のしずけさが浮かびます。そう、永遠とはなにを指すことばなのかと、ふと考えてしまうのです。