鑑賞「013:元気」

TB1〜176までのなかからのステキ短歌です。難しいお題ですねこれは。この言葉がもうすでに心身の状態なので、そこからさらに味のある叙情でいこうとするには「元気」という単語はありふれすぎ、おおざっぱに総括しすぎてる。なので慎重に扱わなければ歌はとんでもなく凡庸になるし、逆にそのへんを意識している歌は強いですねー。


■ 昨晩も飲み明かしたる韓国の友達は聞く「お元気ですか?」
   (マメ)
そんなわけで今回ピカイチのお歌はこれです! このズレ、お題のひねり、この味。お題だけでも難しいのに、それを「お元気ですか?」という超定番フレーズにしてこんなにも妙味あるおかしみに仕上げてる。すごいです。エピソードとしてもこころがほっこりする一コマ、詳しくはコラムに書きましたので是非ぜひ読んでください!

 ●『純響社WEB』コラム掲載作品。『アトリエの庭から』へどうぞ。→ http://junkyosha.com/


私も、以前通っていた英会話スクールに韓国の留学生がいて、これに似た体験をしていました。打ち解けあってもなお間にあるささやかなズレを感じながら、けれどそのズレがなぜか心地いいの。いやホントこれお題を巧く&旨くつかってるお歌だとおもいます。ラヴ。


そのほかにはこのお歌たちも印象に残りました。


■ 明け方に元気になって飛び回る夢をみました ゆめでした (富田林薫)
「夢」と「ゆめ」、表記の違いがいいですね、ひらがなの「ゆめ」って、はらはらとほどけてゆく感じ、漢字の夢よりもっとはかないの。個人的に、この風景を私はとてもよく知っているので、読んでいて胸がぎゅうぅとしました。五句目の字足らずは「□□ゆめでした」と読みたいです。目覚めて、嗚呼、って我にかえるまでのまどろみのように。


■ ありし日は元気な声に励まされひたすら空を追った噴水 (虫武一俊)
元気な噴水に子供たちも湧き立っていたっていうより、子供たちが元気だから湧き立っていた、という噴水目線です。自己投影してるのかもしれないですね、幸福なエネルギーが傍らにあったころの自分を想うような、実際の風景を詠んでいるように見えて主体の心象そのものであるともいえます。水のない噴水の、おもいで。