鑑賞「025:氷」

1〜235首からのピックアップです。氷、といえば私のなかではエロスなんですが、そういうのはほとんどありませんでした。。といっても氷攻めとか口にふくんでどうとかそういう直接的なやつじゃないですよ!(笑)それは氷のようなエロスじゃなくて氷を使ったエロ。「氷のようなエロス」を、ぜひみなさん番外編で詠んでイシハタに知らせてくださいませ。


■ 溶けかけの氷のような立ち位置で同窓会を楽しんでます
   (わだたかし)
ふふ。同窓会の楽しみかたって、ちょっとこう、中の上以上推奨って感じがしますね。過去と現在のズレ、さまざまな事情と心情がからみ合う。上句がその空気感をうまく描いていて、さらにですます調の結句でおかしみを出してる。いいですね。


■ わかりにくい冷たさですが君のには氷をひとつ多く入れます
   (伊藤夏人)
わかりにくいっ。わかりにくいけど明らかなえこひいき、もしくは仕打ち、もしくはクールなツンデレ。氷ひとつ分でもいい、冷たさでいい、その特別感にクラリとしてしまうんです。特別に、なりたいよね。。はふぅ。


■ 幸せな結末のあとお城にはふたりをぶち抜く氷が降った
   (月下燕)
物語はいつも肝心なところをはぐらかす。エバーアフターのその向こう、そのリアリティ。もともとオトナ世界の不条理が描かれている童話絵本を子ども向けに改造してあったりと、童話という存在自体がある種はぐらかされたものである、その舞台を枠外で「ぶち抜く」っていう言葉のチョイスにしびれます。


■ 連絡橋に氷が張って溶けてゆく おんなの声でじゃあねと言った
   (我妻俊樹)
嗚呼、いいなぁ。もうこれだけでひとつの映画みたいだ。言葉のひとつひとつにまったく無駄がない。感情の想起は叙情詩でなければできないかっていうと絶対そうじゃなく、キーはこの客観性、つまり叙情あふれる叙事詩なんです。「氷が張って溶けてゆく」、ただそれだけの描写で、連絡橋のこちら側で起きていただろう二人の日々の想像をおおきくかき立てられます。「おんなの声で」とかね、もう、たまらない。我妻さん、歌集出してください、大ファンです。