鑑賞『022:でたらめ』

ハロー、せかい、満開の桜に、すこしずつ葉が混じってきました。さてさて、TB1〜120のなかからのピックアップです。


■ でたらめに立つ電波塔 敵を持ちドンキホーテは幸福だつた
   (尾崎弘子)
三句以降の核心にハッとします。敵だとか、正義の反対は悪だとか、そのような幸福・わかりやすさ。明確な標的(と自身が定めたもの)があると、生きやすいですからね、人は。なので「でたらめに立つ電波塔」、なにかこう、ひとりひとり、人があっちでもこっちでも、途方にくれながら拠り所のない怒りや苛立ち・存在証明・求める気持ちを発信している状景が浮かびます。朗読すると、ひびきの統一感が口のなかに気持ちいいです。


■ でたらめに口ずさむ歌 ドーナツのドを鈍感な恋人のドと
   (五十嵐きよみ)
嗚呼。替え歌にするしか、それを口にする術なんてないですよね。軽快なリズムで、おどけたりして。歌ってる主体のそばに、現に恋人さんいそうだなあ。ちょっとだけ聞こえるような距離なんだけど、鈍感な恋人は鈍感だから真意は気づかないの。(妄想ちう)泣きたくなるよね、ときどき。がんばろうよね、おんなのこ。