鑑賞「066:雛」

本日ふたつ目のお題、TB1〜175のなかからのピックアップです。ちなみに「064:ふたご」はTB1〜180まで、「065:骨」はTB1〜180まで鑑賞。ピックアップはありませんです、多謝。


■ 雛衣を繕う叔母のうなじから胡乱な花が咲いております
   (村上きわみ)
「胡乱(うろん)」。怪しい、疑わしい、といった意味です。女性が花を咲かせるとしたらやはりうなじ。けれどこれは胡乱な花なのです、日なたに出ちゃいけないっぽい花です。叔母よ、婚前に何があったのだ。なにかこう、墓場までもっていくつもりの艶やかな秘密をひとり思いだしては、漏れないようにほつれを縫い直しているかのようです。主体には、匂いがバレちゃってますけどね。うなじだしね。「咲いております」という言い回しが、深刻にならず軽々しくなく、けどなんだか興味があるような、そんな大人な反応で叔母のようすを伺っています。きまらないことの多い初句の六音も、うち最後のひとつはほぼ母音(wo≒o)なのでほぼ淀みなく二句へながれ、自然な感じです。