鑑賞「045:群」

TB1〜133のなかからのピックアップです。


■ 雲梯を群青色に塗りこめて七月末の校庭静か
   (tafots)
「雲梯」と「群青」、-unの頭韻がのどに心地よいです。雲のはしご、って書くんですよね。間近にある塗りたて雲梯から、そのまま主体の視線がぐーーっと広角な夏空に向いていく、そんな歌中のおおきな動きが、静まりかえった校庭との好コントラストを生んでいます。「七月末」、なんかいいですね。韻はもちろん、例えばおなじ期間がふくまれる"夏休み"という普遍的なフレーズよりも、「七月末」という言い回しによって「塗りこめ」たその手の主の雰囲気をより限定して想像することができます。なんとなく、事務的で、ふだん野外とは関係ない感じの手。すくなくとも、部活なんかでしょっちゅう出勤してくるようなジャージ教師が作業してるっていうよりは、明日末日だし書類を〆なきゃならないんだけどなーと思いながら遊具修繕の手伝いに借り出されてペンキ缶を手にするメガネ女史、みたいな。いや妄想全開ですけどね(笑、どうでしょう。よりイメージを限定するための言葉選び、いいですね。


もう一首、紹介させてください。

■ いつの日か火群(ほむら)に焼かるることあらむ蟻つらなりて交尾しつつゆく
   (梅田啓子)
火群(ほむら)は荼毘であるし、おそらく戦火でもある。つらなる蟻の整列・規律が日本を思わせます。蟻たちは、知ってるのかな、自分たちの、いつかの日を。そして私たちは。