鑑賞「033:みかん」

TB1〜132のなかからのピックアップです。033、やっと三分の一まで来れました。鑑賞で完走できるか私……!


■ 冬の夜の隅の木箱でじりじりとみかんは蜜柑に潰されてゆく
   (鮎美)
「みかん」と「蜜柑」の使い分けがいいですね。同じものでありながら、表記が変わると含むものも変わってくる、だからこそ、普段からカナ・かな・漢字表記の選別はだいじ。蜜は痛み/傷みやすく、まわりの健康・健全なみかんを徐々に侵食していきます。主体はそのありさまを「みかん」寄りに観ているようですが、さて。。「蜜柑」なる者に心当たりがおありか。


このほかには、
■ 遠くへと行きたい望みかんからと鋼の箱に骨を鳴らして (虫武一俊)
のお歌が気になりました。「みかん」の詠み込みかたにひとひねりあります。「鋼の箱」と「骨」の具体像をうまく掴めず(鋼、とあるので骨壺ではなさそうです。それとも、歯?)、まだ風景はぼんやりとしたままですが、骨の鳴る音が「遠くへ」の望みとつながっていくのはとてもよくわかる感覚です。いますこし頭の引き出しにしまって、味わいを確かめてみたい一首です。