鑑賞「007:決」

こんにちは。二週間ぶりの更新となりました、TB1〜197までのなかから印象に残ったお歌たちです。決、という強い語感なんですけど、ここに否定形を乗せて停滞させたり、受け身にして被ることもできるわけで、この文字をどのようなベクトルに乗せて動かし/動かさずにいくのか、興味深く拝読しました。


■ 立ち去ったのはあなたでしたか決められた夢ばかり見る魔法をかけて
   (松木秀)
恋。恋だなぁ。幻なんですけど、見せられ見てしまう夢。二句切れ、お題を組み込んだ腰から結句までの流れ、とても、とてもきれい。


■ 日曜8時の過ごし方 決めたこと破ったことも誰も知らない
   (子帆)
決める、破る。強い言葉。みずうみの深みを想いました。これ、一人暮らしを詠ったものでもいいし、パートナーや家庭をもっている主体でもいいですね。いや後者のほうが謎めきがあって余計好きかもです、作者さんの原風景と違ったらごめんなさいね。決意、というものは水面にはない。見えるもの聞こえるものが、その人の、相手のすべてだとおもわないように。人知れぬ場所、激動のこころを詠ったステキ一首。


■ 無限と対決するために零を設けたこと。暑い夜でしたね。
   (青木健一)
どっちが茫洋だろう、たとえば疾走をつづける素数と、なにごとにも左右されず無として豊かに鎮座するゼロと。ゼロ。数えないということ、どこにも行かないということ。全体的に破調なんですけど、関係性と相まってそこはすんなりと歌に入りこめました。